約 1,859,404 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1204.html
この宿、「女神の杵」亭が砦であった頃の栄華を偲ぶ中庭の練兵場。 そこがギアッチョとワルド、二人の決闘の舞台だった。 腰を落として我流というよりは全く適当に剣を構えたまま、ギアッチョは心中で舌打ちする。 ――怒らせて手の内を曝け出させるつもりだったが・・・やっぱりそう上手くはいかねーらしい 敵もさる者、この程度の挑発で逆上するような器量ではないようだ。「流石は女王の護衛隊長ってわけか」とギアッチョは一人呟く。 しかしそれならそれで別にいい。少なくとも戦い方の一端は把握出来るはずだ。 ギアッチョは己の左手に眼を落とす。その甲に刻まれたルーンは、手袋の下からでもよく分かる光を放っていた。 「どうしたね使い魔君 来ないのならばこちらから行くよ」 一向に動こうとしないギアッチョを挑発すると、ワルドは地を蹴って駆け出す。 戦い慣れた者の素早さで一瞬にしてギアッチョに肉薄すると、レイピアのように作られた杖で無数の刺突を繰り出した。 風を切り裂いて繰り出されるそれをギアッチョはデルフリンガーで次々と捌く。 ――こいつはすげぇな・・・正に「身体が羽のように軽い」ってやつだ。 己の剣捌きに一番瞠目していたのは、他ならぬギアッチョ自身であった。 素の状態でもワルドの突きをかわす自信はあるが、今のギアッチョは例え千回突かれようがその全てをかわし切れる程に楽々とそれを捌いていた。 が、予想以上の「ガンダールヴ」の能力に意識が完全にワルドから逸れていた為、突きと同時に行われていた詠唱にギアッチョは気付けなかった。 詠唱が完了したと同時に目の前の空気が弾け、 「うぉおッ!?」 空気の槌をモロに受けてギアッチョは吹っ飛んだ。 ごほッと肺から空気を吐き出しながらもギアッチョはとっさに空中で体勢を整え、デルフリンガーを地面に突き刺して転倒を回避する。 「おいおい、ガードぐらいしたらどうだい? 手加減はしてあるが下手をすれば肋骨が折れるぞ」 羽根帽子のつばを杖の先端で持ち上げて、ワルドはニヤリと笑った。 ルイズが心配げに見守る中、ギアッチョはチッと一つ舌打ちをしてから剣を抜く。 「大丈夫かいダンナ」 「ああ?この程度じゃノミも殺せねーぜ」 若干ふらつきながらも、デルフリンガーにギアッチョは何でもないといった顔でそう返す。 ギアッチョは無傷で勝つことも少なくはなかったが、スタンド使い同士の戦いでは瀕死の怪我を負ったり手足が切り飛ばされたりなどということは珍しい話ではない。 それに比べれば今のダメージなど正に蚊に刺されたようなものであった。 余裕の笑みを浮かべるワルドにガンを飛ばして、今度はこっちの番だと言わんばかりに走り出す。 ワルドは杖を突き出して既に詠唱を終えていたエア・ハンマーで迎撃するが、歪んだ空気の塊が衝突する寸前ギアッチョは「ガンダールヴ」の脚力で右へ飛び避けた。 規格外のその脚力をフルに利用して、ギアッチョは一瞬でワルドの背後を取る。 そのまま身体をねじらせてデルフリンガーを一閃するが、ワルドは一瞬の判断でギアッチョに体当たりし、身体でその腕を止めた。 「・・・君、今首を狙ったな」 身体を衝突させ合った格好のまま、ワルドが鋭い眼で睨む。 「わりーな いつものクセでよォォー、次からは気をつけるとするぜ それよりてめー・・・なかなか素早い判断が出来るじゃあねーか」 「当然だ 女王の護衛を任される者の実力を舐めないことだな」 言うが早いかワルドはぐるりと回転してギアッチョに向き直り、そのまま流れるような動作で三発目のエア・ハンマーを放った。 下からアッパーの要領で撃ち出された風の槌はギアッチョを空高く打ち上げる――はずだったが、 「何・・・?」 ボドンッ!!といういつもの景気のいい打撃音は全く聞こえず、上空高く吹っ飛んでいるはずのギアッチョは数十サント浮き上がっただけで大したダメージもなく着地して いた。 デルフの口からは「おでれーた」という言葉が漏れていた。どうやったのかは分からないが、今自分は魔法を吸収した気がする。 しかし彼が己のしたことを完全に理解するより先に、ギアッチョは次の行動に移っていた。 メイジではないギアッチョは、今の現象をただの不発か角度その他の問題―― 要するに偶然だと考えた。 喋る魔剣を乱雑に構え直すと、色を失くした双眸でワルドを射抜く。 ――同じ魔法を三連発・・・工夫も何もありゃしねえ 手の内見せる気は更々ねえってわけか まあそれもいいだろう。剣のいい練習台にはなる。ギアッチョは足に力を込めると、地面を変形するほどの勢いで蹴って走り出した。 一方ワルドは、エア・ハンマーを打ち破ったものの正体に早くも勘付いていた。 ――あの剣に我が風が吸い込まれるのを感じた・・・どういう原理かは知らないが、どうやら魔法を吸収するマジックアイテムのようだな・・・ 杖をヒュンヒュンと振り回してから構え、ワルドは呟いた。 「それならそれでやりようはある」 「彼はどうして魔法を使わないんだろう?」 決闘を見物に来ていたギーシュが、ロダンの彫刻のようなポーズで言う。 同じく本を閉じて二人を見ていたタバサは、それを聞いてぽつりと口を開いた。 「力を隠してる」 「まあ、確かに王宮の関係者にアレがバレたら一悶着ありそうだものねぇ」 うんうんと頷いてキュルケが同意する。その横ではルイズがずっとブツブツ文句を言っていた。 「何よあのバカ・・・いつもいつも勝手なことばかりするんだから・・・!そりゃ使い魔だって物じゃないけど、たまには言うこと聞いてくれたっていいじゃない! ワルドもワルドよ いつもはこんなことする人じゃないのに・・・」 怒りと不安がないまぜになった顔で呟くルイズの肩にポンポンと手を置いて、ギーシュは遠い眼をする。 「分かってやりたまえルイズ 男にはやらねばならない時というものがあるのさ」 分かったようなことを言うギーシュにジト眼を送ってから、ルイズは複雑な顔でギアッチョ達に視線を戻した。 「全然分からないわよ バカ・・・」 決闘直後とは正反対に、今度はギアッチョが怒涛の勢いでワルドを攻め立てていた。 袈裟斬りから斬り返し、そのまま薙ぎ払いから突きを繰り出し、全く型というものを感じさせない動きで息つく暇なく攻め続ける。 言ってしまえば完全にでたらめな剣捌きなのだが、「ガンダールヴ」の力で繰り出される剣撃は力といい速度といいそれだけで大変な脅威であった。 しかしワルドは風を裂いて繰り出されるそれをひらりとかわしするりと受け流し、涼しい顔で避け続ける。 そしてギアッチョがデルフリンガーを大きく振り下ろした瞬間、ワルドは攻勢に転じた。 地面まで振り下ろされた魔剣を完璧なタイミングで踏みつけ、同時に手刀で喉を突きにかかる。ギアッチョは即座に左手でそれを払いのけたが、その瞬間胸に押し当てられた杖までは手が回らなかった。 ドフッ!! 空気が炸裂する音が響き、 「ぐッ!!」 人をあっさり数メイルも吹き飛ばす衝撃を再び真正面から喰らって、ギアッチョは豪快に吹っ飛んだ。ギアッチョはなんとかバランスを保って着地したが、 「剣を手放したな、使い魔君 勝負ありだ」 主人の手から離れた剣を踏みつけたまま、ワルドが勝利を宣言する。てめー足をどけやがれとデルフリンガーがわめいているが、彼はそれを軽く無視して続けた。 「やはり『ガンダールヴ』、とてつもない膂力だが・・・君の太刀筋はまるで素人だ」 自分を睨むギアッチョから眼を外して、ワルドはルイズへと歩いて行く。 「分かったろうルイズ 彼では君を守れない」 そう言ってルイズの肩を抱くと、後ろ髪を引かれるルイズを伴ってワルドはギアッチョに振り返ることもせず宿へと戻っていった。 そりゃあ剣なんざ今日初めて使ったからな、と彼が心の中で笑っていたことも知らずに。 恐る恐るギアッチョの様子を見ていたギーシュ達は、どうやら彼が怒っていないと知ってバタバタと駆け寄った。 「怒らないのね?ギアッチョ」 「意外」 キュルケとタバサが珍しいといった顔でギアッチョを見る。そんな彼女達に眼を向けて、ギアッチョはフンと鼻を鳴らして笑った。 「初めて剣を使った人間を本気で攻撃する野郎に怒りが沸くか?笑いをこらえるのに必死だったぜ」 初めてという言葉に、三人の顔はますます驚きの色を濃くする。 「ええ!?だ、だってあんな凄い動きしてたじゃない!」 その場の疑問を代表して口にするキュルケに、 「ルーンが光ってた」 フーケ戦の時と同じ、とタバサが鋭く指摘した。ギアッチョは数秒の黙考の後、 「・・・全くよく観察してるじゃあねーか ええ?タバサ」 諦めたように溜息をつくと、手袋をずらして左手をかざした。 「『ガンダールヴ』のルーンらしい 伝説の使い魔の印だとよ」 「が、がん・・・?何・・・?」 何それと言わんばかりのギーシュとキュルケにタバサが説明する。 「あらゆる武器を使いこなしたと言われる、始祖ブリミルの使い魔」 「嘘っ!?」「凄っ!」とそれぞれの反応を返す彼らの前で、ギアッチョは既に鞘に収めていたデルフリンガーを抜き放った。途端、左手のルーンが光り出す。 ギーシュ達がおおーだのうわーだのと感嘆の声を上げるのを確認してから、ギアッチョはデルフを収め直した。 「伝説だなんだと言われてもよく分からんが、あらゆる武器を操れるってなマジらしい 武器に触れるとそいつの情報が勝手に流れ込んで来る上に体重が無くなったみてーに身体が軽くなりやがる 大した能力だぜ」 練兵場跡でガンダールヴについてひとしきり歓談したところで、ギーシュがうーんと唸る。 「しかしやっぱり悔しいなぁ」 「ああ?」 「君の魔法は隠さなきゃならないってことは分かるんだが、君はワルド子爵にきっとある日突然伝説の力を得ただけのただの平民だと思われているだろう? それがどうにも悔しいというか歯がゆいというか」 ギーシュの言うことがよく分からず、ギアッチョは怪訝な顔で聞く。 「何でてめーが悔しいんだ」 「いや、だって僕達友達じゃないか」 「・・・友達ィ?」 ギアッチョが素っ頓狂な声を上げるが、ギーシュは全く真面目な顔で先を続ける。 「ルイズもギアッチョも僕の友達だよ 友達が軽く見られるのを何とも思わない奴はいないさ そうだろう?キュルケ、タバサ」 常人ならば赤面するような台詞をこともなげに言ってのけて、ギーシュは実に爽やかな笑顔で二人を見る。タバサは数秒ギアッチョを見つめると、小さくこくりと頷いた。 キュルケはそんなクサいセリフを振るなと言わんばかりにギーシュを睨むが、睨んだこっちが申し訳なくなるほどいい笑顔のギーシュについに負けて、はぁっと大きく溜息をついて口を開く。 「・・・ま、ヴァリエール家に対する累代の宿怨はとりあえず忘れておいてあげなくもないわ」 あくまで余裕の態度を通すキュルケだったが、タバサにぽつりと「素直じゃない」と言われて、 「ち、ちち違うわよっ!」 と途端に顔を真っ赤に染めて否定した。そんなキュルケをタバサは無表情の まま「素直じゃない」とからかい、「違う!」「素直じゃない」「違うっ!」「素直じゃない」の言い争いをギーシュは笑いながら見物していた。 ギアッチョは「友達」というものが嫌いだった。プロシュートではないが、そんなものは幸せな環境というぬるま湯に浸かっている甘ったれたガキ共のごっこ遊びだと思っていた。 普段友達だ何だと声高に叫んでいる奴等ほど急場でそのオトモダチをあっさり見捨てて逃げるものだ。 暗殺の過程や結果でそんな人間を何人も見てきたギアッチョには、「友達」などという言葉は唾棄すべき虚言以外の何物でもなかった。 見ようによっては淡白な関係だったが、彼はリゾットチームの仲間達とは常に鋼鉄よりも固い信頼で結ばれていた。 だからこそ、ギアッチョには「友達」などというものは上辺だけの信頼で寄り集まる愚者を指す言葉にしか思えない。 しかし。しかしギーシュ達はどうだ?ギーシュはルイズをバカにしていたが、家名を賭けてまで彼女に謝罪をした。フーケ戦では身体を張ってフーケの小ゴーレムを 受け止めた。 キュルケはルイズと宿敵であるような素振りを見せているが、ギアッチョがルイズを殺しかけた時真っ先にそれを止めた。ギアッチョがルイズに危害を加えないかを心配してフレイムに監視をさせていたし、フーケ戦ではルイズが心配で彼女に続いて討伐を名乗り出た。 タバサはシルフィードを駆ってギアッチョを止めた。宝物庫の件では文字通り命を捨てる覚悟でルイズ達を救い、その後も怒ることなく討伐を助けた。 そして何より、見なかったことにして逃げ帰ることも出来たというのに、彼女達は己の危険を顧みず傭兵達と剣を交えてまでルイズを助けに来たではないか。 バカバカしい、と言おうとしてギアッチョは口を開く。しかし楽しげに笑いあうギーシュ達にそう言い捨てることは、どうしても出来なかった。 ――甘ったれ共が・・・ 心中そう呟くが、ギアッチョにはもう解っていた。それはカタギには戻れない自分への、ただの言い訳だ。 人殺しだったイタリアの自分と、全てがリセットされたこの世界の自分。彼らの友情を受け入れることは、この世界での生を受け入れること。 ギアッチョは何一つ言葉を発せずに立ちすくんだ。 決断の時は、近い。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/436.html
変わったな、とギアッチョは思った。何が?他でもない自分自身がである。以前の自分ならルイズの甘言になど耳も貸さなかっただろう。躊躇無く中庭を凍結し、学院中を凍結しただろう。己のスタンドの最強を信じて疑わなかったし、実際無敵であった「例え時を止めるスタンドがいよーと、オレの敵じゃあねーッ」ギアッチョはそう確信していた。10人にも満たないチームで組織に反逆するなどという無謀に乗ったのも、自分の能力ならばボスですら倒せると思っていたからだ。しかし現実はどうだ?グイード・ミスタと新入り、ジョルノ・ジョバァーナ。ホワイト・アルバムが奴らの能力に劣るところは一つとしてなかったはずだ。しかしギアッチョは敗北した。何故か。 「答えは簡単だ・・・」 あなどっていたからだ。奴らを・・・そして世界そのものを。同じ「覚悟」をしているように見えても、結局ギアッチョは心のどこかで己の勝利を確信していたのだ。 「もう二度と・・・ブザマな思い上がりはしねェェーーッ」 皮肉にも―彼は死んでから成長した。 ギアッチョの話にルイズは聞き入っているようだった。自室に戻るなりルイズはギアッチョにあれやこれやと質問を投げかけたのだ。ギアッチョは「色々と聞きてーのはこっちのほうだっつーんだよォォーッ」と言いたかったが、こんなガキにいちいち目くじら立てることもないと思いなおし、とりあえずは質問に答えることにした。キレてさえいなければ常識的な判断も出来る男である。 「・・・それで、あなたは情報を奪おうとして・・・逆に殺されたのね」 自分が殺されたシーンをわざわざ反芻されるのは勿論気分のいいものではなかったが、 自分への戒めだと思い文句を言うのはやめた。それにいろんなことに意識が行っていて 気付かなかったが、よく考えればこいつは自分の命の恩人なのだ。少しぐらい不快に なったからといってすぐにキレるのは礼節に欠ける行為だとギアッチョは思った。無論 我慢の限界が来れば1・2発ブン殴るのに躊躇はないが。 「はぁ・・・まさか別の世界から・・・しかも殺し屋を召喚しちゃうなんてね・・・」 最初は別の世界の存在を疑っていたルイズだが、話を聞き終わる頃にはもう すっかり信じていた。何故って自動車だとかDISCだとか常人の頭で創作出来る話じゃ ないと思ったからだ。実際原理を聞いた今でもさっぱり理解が出来ない。 「気に食わない奴がいりゃあいつでも暗殺してやるぜ。「依頼」とあらばな・・・」 と、そこでハッとルイズは気付いた。 「ちょ、ちょっと待ちなさい いくら使い魔だからって人を殺せば罰されるのよ!」 「問題ねーだろォ~?この世界のことは全然しらねーが、例えば・・・『決闘』なんかで 死ぬならよォォ」 何故だか一瞬キザったらしいクラスメイトの顔が浮かんだが、ルイズはブンブンと 顔を振ってそれを打ち消した。 「そ、そうじゃなくて・・・ ああもう、言い方が悪かったわ 人なんか殺す必要はないし 殺しちゃダメだって言ってるのよ!」 「それは命令か?主としてのよォ」 「りっ・・・理解出来ないのなら命令するわ 殺人は許可しない!」 「なるほどな ここはオレのいたような世界とは違うってことか」 「・・・解ればいいのよ」 「だが断る」 「何ッ!?」 「極力ご期待に沿えるよう努力はするがよォォ~ 絶対殺さないなんて約束は出来ねーぜ 特に相手が下衆野郎の場合はな・・・」 殺し屋に下衆野郎と言われる人間ってどんなのよ、とルイズはツッこみたかったが、 こいつはどんなタイミングでブチ切れるか解らないので「お願いだから殺さないでよ・・・」 と音量3割減で言うにとどまった。 その後あらかたギアッチョにこの世界の事を伝え終わったので、ルイズはさっさと 寝ることにした。―なんだか今日はどっと疲れたわ・・・― しかしルイズがベッドに潜り込んだ時、「待ちな」というギアッチョの声が響いた。 「なっ、何よ」 もはや話しかけられただけで怯えるルイズである。 「肝心なことを訊くのを忘れてたぜ」 ギアッチョはそこで一呼吸置いてから、最後の質問をした。 「オレの世界によォォ・・・戻れる方法は―あるのか?」 暗がりでギアッチョの顔は分からなかったが、今までとはうってかわって沈んだ声 だったので―ルイズは事実を伝えるのをためらった。考えてみれば、人を殺すなどと いう己の人生が賭かった仕事をバカみたいに安い報酬でやらされていたのだ。 殺人などしたくなかった者も中にはいただろう―果たしてギアッチョがどうだったのか ・・・それは分からなかったが―なのに反逆という命がけの訴えに対してボスから もたらされたものは「死」だった。仲間が次々と死んでゆき、ギアッチョまで死んで しまった今、生き残っているのはリーダーのみ・・・或いは彼ももう死んでいるかも 知れない。ギアッチョからすれば自分が死んでしまったからといって諦めのつく 事であるはずがないだろう。今すぐにでもリーダーの元へ駆けつけたいはずだ。 「・・・・・・私は知らないわ だけどこの学院の図書室なら使い魔を送り返す方法が あるかも ・・・今度探してみるわ」 「・・・・・・そうか よろしく頼むぜ」 勘違いのようなものだとは言え自分を殺そうとした男だというのに、その言葉に ルイズの胸は奇妙に締め付けられた。 「・・・あなたのリーダー ボスを倒せてるといいわね・・・」 「・・・ああ」 そう呟くと、ルイズは罪悪感を振り払うかのように眼を閉じた。 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/2768.html
「ええい、もう一度よ!」 無理矢理にもう一度だけ召喚のチャンスを得たルイズ。 モクモクとした噴煙が消え、そこから現れたのは…… 「む……ここは……何処か……?」 東方不敗マスターアジアである。 予想外の大物の登場に、ざわ…ざわ…となるコルベール&学生s。 「東方不敗きたよ……」 「俺、サイン貰ってこようかな……」 「よし、これなら文句無しに成功よね……、契約しなくちゃ!」 東方不敗の手に浮かび上がるルーン。流石は東方不敗である。玉子とは違いその痛みにも微動だにしない。 「やったわ、留年回避……あら?」 様子がおかしいと、ルイズは気付く。あまりにも反応が無さすぎるのだ。 「これは……まさか!?」 そう、東方不敗は既に死んでいた。 彼はGガンダム本編で言う45話……『さらば師匠!マスター・アジア、暁に死す』の絶命直前よりこの地に呼ばれたのだ! 「……もう息はありませんね」 「ししょおおおおおおおおおおっ!!!」 【トリステイン魔法学校】 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@カオスロワ】 【状態】留年 【装備】つえ 【道具】支給品一式 【思考】1:\(^o^)/ 【ジャン・コルベール@ゼロの使い魔】 【状態】爆笑 【装備】つえ 【道具】支給品一式 【思考】1:学園長にルイズの留年を伝える 【東方不敗マスター・アジア@機動武闘伝Gガンダム 死亡確認】死因:石破天驚拳(加害者:ドモン・カッシュ)
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/37.html
【解説】 ゼロの使い魔に存在するアイテムの種類。 一般的に市販されているモノや、用途不明のモノ。 あるいは現代社会から流れ着いたモノもそう呼ばれる。 【例】 破壊の杖
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/354.html
空が青く、清く、何より広い。 無遠慮な壁に邪魔されることなく、どこまでも高く高く続いていく。 陽が暖かい。豊かな草原が風になびいて波を打っている。 潮代わりの草いきれが流れ、散っていく。 人間はこうした土地に、郷愁や温かみ、開放感に心地よさといった正の感覚を知るのだろう。 一般的なホモサピエンスとはかけ離れた存在である彼にも悪くない場所と思えた。 顎を引き、見渡し、頷く。やはり悪くない。 なぜここにいるのか、その原因は分からない。 ここが地球上のどこかも分からない。 何者かによるスタンド攻撃なのかも分からない。だが、それでも悪くはない。彼にとってはどうでもいい。 草の向こうに巨大な石造りの建物が見える。 テーマパークか。図書館、博物館、見たまま城。刑務所ということはなさそうだ。 退屈な環境ビデオのごとく、稀に見る良い環境だ。 周りを取り囲むは場所柄にそぐわない怪しげな集団だったが、それに怯え竦むことはなかった。 彼は無敵だった。文字通りの無敵だった。「敵」が「無」かった。 短くも長くもない生涯で恐怖を感じたことは一度としてない。 近しい者の死にも、それによって与えられるであろう己の死にも、 客観的な視点で俯瞰から眺め続けてきた。それは今現在も変わらない。 そこかしこから笑い声が漏れ聞こえた。聞き慣れた種類の笑い――これは嘲笑だ。 彼と同じく、集団に取り囲まれた一人の少女に対して斟酌無い嘲りが投げかけられている。 「使い魔」「失敗」「ゼロ」といった単語が四方から飛び交い、もしくは囁かれ、 愛らしい少女は白い頬を朱に染め、大きな瞳をさらに見開き、屈辱に肩を震わせていた。 意味の分からない単語も多かったが、そこにからかいの意思を感じ取ることはできた。 彼にとっては見慣れた光景だ。 何やら怒鳴り返しているところをみると、少女は侮辱に対し侮辱で返しているらしい。 やはり見慣れていた。 しかし集団ということを抜きにしても相手方の優位は小揺るぎもしないらしく、 少女の怒鳴り声は集団の上を空しく通り過ぎていくだけだ。 ここまでくると、もはや見飽きている感がある。 少女を含め、皆が皆似通った格好をしていた。 安物囚人服ではない。かなり上等な……学生服だろうか。 ただ一人の年長者である禿げかけた中年男性は、 ものものしい木の杖に前時代的な黒いローブを纏い、 まるでおとぎ話にでも登場する魔法使いのようだった。 眼と耳から手に入った情報を照合し、状況を読み取り、ここで彼は合点がいった。 なるほど、見飽きた光景だったわけだ。 ここはいわゆる新興宗教で、彼らはその少年信徒といったところか。 目の前の少女は、儀式か何かに失敗して笑われているらしい。 信仰をささやかな心の拠り所にするのは大いに結構。 だが、宗教そのものを心の全てにしてしまっては本末転倒だ。 かつて大切にしていたはずの人間関係は磨耗し、やがて消えてなくなる。 胴欲かつ青天井のお布施乞食に吸い上げられて金が無くなり、 信じる物以外の全てを捨てて時間も失い、教団の意向次第で唯一無二の生命さえ奪われる。 そこまでして尚、誰から感謝されるということもなく、教祖は笑い、妄執を捨てず、 誰のおかげでもない、自分が偉大だからこの世は動いているとうそぶき、ふんぞり返る。 何もいいことはない。幸せを掴むためにはもっと他にすべきことがある。 といった意のことをわめきたてたが、彼の声はあえなく無視された。 ためになる助言に聞く耳を持たないとは狂信者にありがちなことだが、 聞こえないふりにしては出来過ぎている。 目前まで全力移動してから緊急停止などといったことを試してみるが、それもまた無視された。 喋り過ぎだと叱責されたこともある声を張り上げ、周囲を旋回してみるが、 彼に注意を払うものは、少女を含めて一人としていない。 彼を見ることができる才能の持ち主はこの場にいないようだ。困ったことになった。 少女は人垣に怒鳴り返すのをやめ、今度は中年男性に食ってかかっていた。 桃色がかった柔らかな金髪が持つ印象に反し、何かと攻撃的に生きている。 そのなりふり構わぬ姿勢は周囲のさらなる失笑を買い、 それにより少女はますます必死になっていった。 中年男性はその他野次馬連中とは違い、それなりに同情的であるらしい。 チャンスは一度ではない。二度でも三度でもない。 五度でも六度でも成功するまでやればいい、と慰めともつかない慰めをかけ、 とりあえず授業を終了する旨を宣言した。 これは単なる儀式ではなく、授業の一環であったようだ。つまり宗教学校ということか。 彼にもいまいち得心がいかなかったが、それどころではないことが起きたため、 疑問は彼方へ吹き飛んだ。 中年男性――年齢や立ち振る舞いからいっておそらくは教師――の号令一下、 少年達――ということは生徒だろう――は宙に浮いた。そう、生身の人間が宙に浮いた。 大きな口をさらに大きく開け、半ば呆然と彼が見送る中、ある者は黙ったまま、 ある者は友人と談笑し、ある者は残った少女をからかいながら、石造りの建物に向かって飛んでいく。 ワイヤーもクレーンもタネもトリックもない。 自分達が仕出かした奇跡を特別視する様子もない。 ごく自然な、当たり前の、家常飯事、日常所作、息を吸って吐くのと同じように、空を飛んでいく。 あとには大口を開いて見送る彼と、笑いものになっていた少女が残された。 少女は遠ざかる背中の一群を睨み、ふと目を逸らし、だがもう一度睨みつけ、 今度は目を伏せ、ため息とともにもう一度目をやった。 今度は睨みつけてはいなかった。 空飛ぶ旧友達の最後の一人までが建物の中に納まるまで目を離さず、 自分以外の動くものが見えなくなってからようやく動き始めた。 右手を開き、閉じ、開き、閉じ、開き、じっと見る。 再び出かけたため息を噛み殺すとともに奥歯を噛み締め、 空を飛ばず、右足と左足を交互に動かし、確かな足取りで前へ進む。 「あ、チョット待ちナー」 我に返り、彼は制止しようとしたが無視された。やはり聞こえていない。 「待てっつてンのにヨーッ。ドーなっても知らねーゾ」 声は届かず、物理的に干渉する手段を持たない以上、黙って見送るしかなかった。 少女は一歩、二歩、三歩進んだところで「凶」を踏み、 そこから四歩、五歩、六歩、七歩いったところで石につまずき前へのめった。 両手と膝をつき、ギリギリで顔面による着地は防いだが、 どうやら膝をついたところに石が顔を出していたらしい。 「アーア……やっちまっタ」 不意の痛みに涙を浮かべ、その一滴を拭うために顔へ手を伸ばし、 頬に掌が触れたところでようやく気がついた。が、すでに時遅し。 「マ、コレでウンがついたってトコジャネーノ?」 愛らしい容姿に似つかわしくない、怒声とも悲鳴ともつかない叫び声をあげたが聞く者はいない。 少女が八つ当たりをしたくても相手はいない。 怒りと苛立ちを押し殺し、ハンカチでこすり、頬と掌に付着した獣糞を拭うのがせいぜいだ。 大変に気の毒だが、彼は同情できるだけの心的余裕を持たなかった。 少女の叫びや八つ当たりと同様に、彼の忠告を聞く者もいないのだから。 これは存在意義にもかかわる重要な問題だ。 去り行く少女を横目に、周囲を見渡す。辺りには何も無い。 草、草、草、草、そして石造りの建物があるだけだ。 少女――ゼロのルイズと呼ばれていた――に目を移し、そのまま止めた。 少し悩んだフリをして、ドラゴンズ・ドリームはルイズの後を追いかける。 龍の夢は未だ覚めず。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/670.html
武器屋に入っていくルイズ達を、キュルケ一行は影から観察していた。 「武器屋・・・?何しに行くのよあの子達」 「そりゃあ武器屋なんだから武器を買うんだろう?」 「普通はそうでしょうけど ルイズはメイジじゃない」 キュルケとギーシュがひそひそと話をしていると、 「ギアッチョ」 本を読みながら短く答えるタバサ。その言葉にキュルケが納得している横で、ギーシュはビクンと震えている。 それに気付いたキュルケが、 「ギアッチョ」 と呟くと、ギーシュは小さく「ひぃっ」と声を上げて縮み上がった。 「タバサ・・・コレどーにかならない?」 呆れた声でタバサに助力を求めるキュルケに、 「無理」 少女は簡潔かつ明瞭な答えを返した。 絹を引き裂くような悲鳴が聞こえたのはその時である。 ドグシャアァッ!だのドグチア!だのメメタァ!!だの何やら不穏な物音と共に、 「痛いって痛ギャーーーーーーーーッ!!」という大声が響いた。 音の発信源である武器屋にキュルケ達が眼を向ける。悲鳴と物音はなおも続き、 「ちょ、待って待って痛いから!ホント痛いからコレ!ね! 一旦落ち着こう!ってちょっとやめェーーーーーーーッ!!」 というどう聞いても被害者のものと思われる声に 「逃げてー!デル公逃げてーー!!」 という野太い声が重なり、「剣が一人で逃げられるかボケェ!!ってイヤァァァーー!!」 律儀にツッこみを返す先ほどの声、そしてその後に 「ちょ、ちょっと!何やってるのよギアッチョ!!やめなさいってば!!」 と何かを制止する少女の声が聞こえ、キュルケ達の99%の予想は100%の確信へと昇華した。 「・・・あの使い魔もなんとかならないかしらね・・・」 口の端を引きつらせるキュルケに、 「絶対無理」 簡潔な絶望を以って返答するタバサだった。 ちなみにギーシュは、あっけなくその意識を手放していた。 物音が聞こえなくなって数分、ルイズとギアッチョが武器屋から出てきた。 ギアッチョの手には古びた剣が鞘ごと鷲掴みにされている。 店主と思われる男が顔を出すと、 「生きろデル公ーーー!!」 と叫んでいた。 「デル公?」 誰の事だろう。キュルケがそう思っていると、ギアッチョの持っている剣がひとりでに鞘から顔――のように見えなくもない鍔――部分を露出させ、 「離せ!いや、離してくださいィィィ」とか「ゴミ山でもいいから俺を捨ててくれェェェ!」とかわめいている。 「インテリジェンス・ソードじゃない・・・また変なもの買ったわねルイズも」 当のルイズは、全力で魔剣から目をそむけていた。合掌。 「なぁ!ちょっと考え直そうぜマジに!剣買うなら安くてつえーの紹介すっからさ! 別に俺である必要はないわけじゃん?こんなオンボロよりもっと若くてイキのいいのが沢山あんだって!な!」 なおもわめき続けるインテリジェンス・ソードにギアッチョは目を落として言う。 「なるほど一理あるな・・・」 「だろ!?だったら早く俺を返品しt」 「でも断る」 「何ィィ!?」 ギアッチョは喋る剣を胸の高さに持ち上げて続けた。 「てめーはどうやらなかなか頑丈みてーだからよォォ~~ 武器兼ストレス発散装置として活用させてもらうとするぜ」 一片の光明も見出せないその返答に、デル公の微かな希望は崩れ去った。 「・・・ところでよォォ~~」 ギアッチョが急に声を大きくする。 「今日は大所帯じゃあねーか え?キュルケ いつまでコソコソ覗いてんだ?」 その言葉にキュルケの心臓が跳ね上がる。気付いていた!?いつから!? 「最初から」 と呟くように答えて、タバサは物陰から抜け出した。 「気付いてて放置してたってわけ・・・?これじゃまるでピエロじゃない」 こめかみを押さえて一つ溜息をつくと、未だ覚醒しないギーシュの首根っこを引っつかんで、キュルケは青髪の少女に続いた。 「キュ、キュルケ!?・・・に、ええと・・・タバサ・・・とギーシュまで どうして!?」 いきなり現れた三人にルイズは面食らっている。まさか見つかるとは思っていなかったキュルケは、そのストレートな質問に 「ど、どうしてって・・・えーと・・・」 しどろもどろで言い訳を考える。そして数瞬の沈黙の後、 「・・・そっ、そうよ!あなたが使い魔に振り回される所を見物しに来たのよ!」 と言い放った。 「な、なんですって~!?いくら暇だからって随分悪趣味なのねあんたって!!」 売り言葉に買い言葉で喧嘩を始める二人をやれやれといった眼で眺めるタバサがふとギアッチョに眼を向けると、同じような眼でルイズ達を見ていた彼と眼が合った。 「本題」 ギアッチョがキレる前にさっさと片付けようと思ったタバサは、そう言ってから身の丈よりも長い杖でポコンとギーシュの頭を叩く。 「あいたッ!もっと優しく起こし・・・ん?」 その衝撃で眼を覚ましたギーシュは、キョロキョロと辺りを見回し。汚い路地裏に倒れている自分を見、そしてその自分を眺めているギアッチョを見て―― 魔剣もかくやと言わんばかりの悲鳴を上げた。 「「ちょっと、うるさいわよギーシュッ!!」」 ルイズとキュルケの見事なハモりに、「ヒィッ、すいません!」と思わず直立しようとしてしまったギーシュだったが、松葉杖が手元になかったせいで見事にスッ転んだ。 見かねたタバサが、物陰に捨て置かれていたそれをレビテーションで持ってくる。 「あ、ああすまない・・・」 タバサに礼を言って松葉杖をつかむと、ギーシュは今度こそ立ち上がり、 バッチィィィン!! 自分の顔を思いっきりひっぱたいた。その音に驚いたルイズ達が喧嘩をやめてギーシュを見る。 「・・・よ、よし 気合は入った・・・ッ」 強く叩きすぎたのか、フラつきながらもギーシュはルイズへと歩き出す。 「な、何・・・?私?何の用・・・?」 状況を把握出来ていないルイズの前に立ち、ギーシュはおもむろに松葉杖を投げ捨てた。 そして支えを失ってバランスを崩しながらも彼は地面に膝をつき―― 「ラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに、グラモン家が四男ギーシュ・ド・グラモンが謝罪申し上げる!!」 ガツン!!と石畳に頭を打ちつける。 「申し訳ないッ!!僕が悪かった・・・今までの侮辱、どうか許して欲しい!!」 ルイズ達はあっけにとられていた。キュルケやタバサも、ギーシュはどうせギアッチョにビビって適当な礼もそこそこに逃げ戻ってくるだろうと思っていたのだ。 彼に家名と誇りをかけた謝罪をする決意があったなどと、夢にも思わなかった。 「ちょ、ちょっとギーシュ!何やってるのよ・・・もういいわ!顔を上げて!」 ルイズが慌ててしゃがみこむ。 「許してくれるかい・・・ルイズ」 自分を立ち上がらせようとするルイズに、ギーシュは頭を地面につけたまま問う。 「・・・ええ ヴァリエールの名にかけて」 「・・・・・・ありがとう」 そこまで言って、ギーシュはようやく血に塗れた顔を上げた。ルイズに肩を借りて 立ち上がると、ギーシュはギアッチョに向き直る。相変わらず膝は笑っているが、 その眼に迷いはなかった。 「・・・ギ・・・・・・ギアッチョ 僕は君にも謝罪しなければならない」 しかし口を開きかけたギーシュを、 「待ちな」 ギアッチョは押しとどめる。 「やれやれ・・・どーやらよォォ~~・・・ ケジメをつける『覚悟』だけはあるらしいな」 「ギアッチョ・・・ 謝らせてくれ、僕は」 というギーシュの言葉に被せてギアッチョは続ける。 「別にこいつの従者になったつもりはねーが・・・元はといえばオレがルイズの 使い魔として受けた決闘だ てめーはいけすかねぇ貴族のマンモーニだが・・・ 貴族として貴族に謝ったってんならよォォーー 平民に謝罪なんかするんじゃあ ねえぜ」 意外なギアッチョの言葉に、ギーシュは二の句が継げなかった。 「その代わり、だ 平民は平民らしくよォォーー てめーのツラを一発ブン殴って 終わりにさせてもらうぜ」 「・・・ギアッチョ・・・」 ルイズもギーシュも、この場の誰もが驚いていた。しかしギーシュはすぐに理解した。 まだよく分からないが、きっとこれが『覚悟』なのだと。貴族としての『覚悟』に、彼は 平民として応えてくれているのだと。 「・・・分かった・・・来たまえ、ギアッチョ!」 ギーシュはにこやかにそう答え、 トリステインの青空に、派手な音が鳴り響いた。 ギーシュは、学院へ向かって飛ぶシルフィードの背中で、風竜の主に問いかけた。 「・・・タバサ 『覚悟』って一体何なんだろう」 タバサは本からちらりと眼を外すと、 「意志」 一言短く、しかしはっきりと答えた。それが何を指すのか、ギーシュにはやはりまだ 分からなかったが――彼は今、不思議とすっきりした気分だった。 ==To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8871.html
前ページ次ページゼロの使い魔BW 抜けるような青空、というのはこういった空のことを言うんだろうか。 ぼんやりとした思考で、少年はそんなことを思った。 視線を落とせば、豊かな草原が一面に広がっている。暖められた草の、青臭い匂いが鼻をくすぐる。 遠くに、石造りの立派な城が見えた。彼が居たはずのイッシュでは、余り見ないタイプの建物だ。 だけどよくよく考えれば、以前に『彼』と雌雄を決したのも『城』だったなと思う。そう考えれば、そんなに不思議でもないのかもしれない。 ただそれも、彼が直前まで居たのが『海底遺跡』でなければの話だ。 海の底にある古びた遺跡のそのまた最奥に居たはずの自分が、何故こんな開けた場所に居るのか。 混乱している思考でそんなことを考えているところに、背後から声をかけられた。 「あんた誰?」 振り返れば、見慣れない格好をした女の子が、腰に手を当ててこちらを睨んでいる。 いや、白いブラウスにグレーのプリーツスカートと、服自体はそんなに妙でもない。ただ、首元のブローチによって留められた黒いマントが異彩を放っている。 顔は、まず可愛いと言って間違いはない。白い陶器で作ったようなつくりの良い顔に、強い光を放つ鳶色の眼。背中までかかっている柔らかくウェーブした髪は、ちょっと珍しい桃色がかったブロンドである。 周囲には同じような格好をした少年少女が、彼と女の子を取り巻くようにして立っていた。物珍しげな視線を向けられ、なんとも居心地が悪い。 マントがなければ、学生の集団のようにも見える。まるで昔見た映画の魔法学校のようだ。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』でヘイミンを呼び出してどうするの?」 どこかからそんな声が上がると、意地の悪い笑いのさざめきが少年少女の間に広がった。 「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」 目の前の女の子が、声の上がったほうをきっと睨みつけて口を開く。 「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」 「流石はゼロのルイズだ!」 誰かがそう言うと、人垣がどっと笑う。 どうやら目の前の彼女はルイズと言うらしい。 とにかく、「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け」である。 まずは名前を答えようと口を開いたところで、集団に混じっている『彼ら』に気づいた。 ほぼ習慣と化している手順でバッグを探り、手帳サイズのそれを取り出して開く。 そして最新技術の結晶であるそれのカメラを、彼らのうちの一体――青い髪の小柄な子の隣に控える、やっぱり青いドラゴン――に向け、ボタンを押した。 ERROR:対象はポケモンではありません 「あれ……?」 思わず首を傾げた。これは、人間や単なる無機物に対してそれ――ポケモン図鑑を起動した際に出るメッセージだ。ならアレは、ポケモンではないのだろうか。 とりあえず他の彼らにカメラを向け、同じようにボタンを押してみる。モグリューやきわめて小さいニョロトノのようなそれらにも、図鑑は反応しない。 嫌な予感がして、今度はタウンマップを取り出し起動した。 イッシュではない。カントーでもない。ジョウトでもない。ホウエンでもない。シンオウでもない。 該当データ、なし。 海底遺跡の調査が終わったら他の地方を回ってみようと思っていたから、マップデータはあらかた詰め込んだはずだ。それこそ、普通は入れないような細かいデータまで。 目の前がまっしろになりかけた。 先ほど彼の前に居た女の子が、人垣を割って現れた髪の薄い男性になにやら喰ってかかっているが、そんなことを気にしている場合ではない。 無意識に、腰元のボールを手で探った。『そらをとぶ』を使えば、例え見知らぬ場所であろうと、ポケモンの優れた方向感覚によって見知った街に飛ぶことができる。 だが、手はそこで止まった。今の彼に、それを試してみる勇気はない。試してみて、万が一失敗してしまえば、どうしようもない事実が確定してしまいそうだったから。 ポケモンではない、青いドラゴンやモグリューのような生き物が存在する世界。 果たしてそれは、彼の居た世界と同じものなのだろうか? 「彼はただの平民かも知れないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなくてはならない。古今東西、人を使い魔にした例はないが、この儀式のルールは他のあらゆるルールに優先するのだから」 「そんな……」 視界の隅では、男性に諭された女の子ががっくりと肩を落としていた。 男性がこちらを指さしていた辺り、彼にも関わる話なのだろうが、内容は全く分からない。 「召喚には手間取ったけれど、最後は成功したんだ。きちんと契約まで済ませて、儀式を完遂しなさい」 「……はい」 男性に厳しさと優しさの混じった微笑を向けられて、女の子――ルイズがくるりとこちらを向く。 そのまま近づいてきた彼女は、困ったような表情で彼を見つめて言った。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」 キゾク? 貴族、だろうか。ならさっきの「ヘイミン」というのは平民のことか。 困惑する彼の前で、ルイズは諦めたように目をつむり、手に持った小さな杖を振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」 まるで呪文のような文言を唱えると、杖を彼の額に置いた。 そして、呆気に取られる少年の頬を手で支えると――小さな唇を、彼のそれに重ねた。 「っ!?」 「……終わりました」 すっと立ち上がり、顔を真っ赤にしつつ報告したルイズの背中を、少年は呆然と見つめた。 『ちょうおんぱ』に『あやしいひかり』を重ねがけされた上で『ばくれつパンチ』を喰らったような気分である。分かりやすく言うと、なにがなんだか分からないということだ。 「『サモン・サーヴァント』は何度も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」 頭の薄い男性が、嬉しそうに言った。 それを皮きりとして、またしても人垣が騒ぎ立てる。 どうやら、ルイズというこの女の子は基本的にからかわれる立場らしい。『洪水』『香水』『ゼロ』などの言葉が飛び交うが、頭に入ってくることはなかった。 駄目だ。完璧に混乱してしまっている。とりあえず、あの男の人にでも話を聞いてみよう。 そう決めたところで、身体が妙に熱くなった。 特に右手の甲が熱い。むしろ痛い。熱したヤカンに手の甲を押しつけたらこうなるだろうか。思わず右手を抑えてうずくまる彼に、ルイズが苛立った声をかける。 「『使い魔のルーン』を刻んでいるだけだから、すぐ終わるわよ」 それは、時間にすれば確かにすぐ終わるのかもしれなかった。ただ、これまで強い負荷を受け続けてきた彼の精神は、そんな痛みに耐えきれず。 トウヤは めのまえがまっしろになった! 「ねえ、ちょっと、大丈夫!?」 ゆさゆさと身体を揺さぶられて、少年は目を覚ました。眼前には、女の子――ルイズの顔。 バックに広がっているのは青い空だ。どうやら彼は、草原にあおむけで横たわっているらしい。痛みの酷かった右手の傍では、髪の薄い男性がなにやらスケッチを取っていた。 大丈夫、と言って起き上がると、ルイズがじろりと睨みつけてくる。 「ルーンを刻まれた程度で倒れるなんて……まぁ、大事でなくて安心したけど」 後半が良く聞こえず聞き返そうとするも、その前に周囲から野次が飛んだ。 「契約で使い魔を殺したのかと思ったよ!」 「そしたら、ゼロどころかマイナスじゃない。ルイズのキスは『あくまのキッス』ってやつ?」 ルイズの鳶色の眼が怒りできらめく。そのまま唇を開いて反撃の言葉を吐き出そうとしたところで、男性がパンパンと手を叩いて場をおさめた。 「そこまでです。……じゃあ皆さん、部屋に戻りましょうか」 そして男性はくるりときびすをかえすと、ふわりと宙に浮いた。 周囲の人垣も、同じように宙に浮く。そしてそのまま、城のような石造りの建物へと飛び去った。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ、『フライ』どころか『レビテーション』すら使えないんだぜ」 「その平民、『ゼロ』の使い魔としてお似合いよ!」 口々に叫んでは、紐で引かれるように城へと飛んでいく。 少年は口をあんぐりと開けてそれを見送った。彼の常識では、人は飛ばない。個人で使える飛ぶ手段はあったはずだが、どうにも思考がはっきりしなかった。 少年と二人残されたルイズは深いため息をつくと、疲れたように彼に問いかけた。 「あんた、なんなのよ」 訊かれたのでとりあえず名前を答えようとして、すんなり出てこないことに戸惑った。それどころか記憶全体にもやがかかっているようで、なにも思い出せない。 思い出せないので首を振る。ルイズが慌てたように「名前は?」とか「住んでいた場所は?」などと訊いてくるが、ことごとく返せない。 「まさか、記憶喪失……?」 「そう、みたい」 恐る恐るといったその言葉に、彼はこくんと頷く。 「よりによって召喚したのが平民で、しかもそれが記憶喪失だとか……ああもう!」 「……ごめん」 ルイズは苛立ちを込めて彼を睨みつけるが、恐縮したように縮こまってしまっている相手に怒り続けることは難しかったらしい。 彼女は再び肩を落とすと「部屋に戻るわよ」と気の抜けた声で言った。 「記憶喪失ってのは本当みたいね」 ルイズがこちらの世界のあらましを語り、少年が分からないところについて訊く、といった形でいくらか会話した後、彼女はそう頷いた。 地名や歴史はともかく、貴族と平民の違いやメイジ、更には魔法についてすら知らないというのは、ハルキゲニアではあり得ない。幼児ですら持っている知識だ。 例え東方にあるとされる『ロバ・アル・カリイエ』から来たと考えても、魔法についての知識まで欠けているというのはおかしい。かの地の近くには、あの恐ろしいエルフが居るはずなのだから。 「……とりあえず、明日にでも校医に診て貰いましょう。ここまでなにもかも忘れてると、日々の暮らしにすら支障が出かねないわ」 「ありがとう」 にこりと笑いかけられ、つい溜息が洩れる。この使い魔は、事態の深刻さを理解しているのだろうか。 「使い魔の健康管理も主人の仕事よ。気にしなくて良いわ」 「……俺がゴシュジンサマのツカイマだってのは分かったけど、具体的にはなにをすれば良いんだろう?」 そういえば、彼の立場については説明したが、使い魔の仕事の詳細までは話していなかった。 記憶が戻るにしろ戻らないにしろ、知らせておいて損はないだろう。 「使い魔の仕事は主に三つよ。まず、主人の目となり、耳となること……なんだけど、これはダメね。わたし、なんにも見えないもの」 「そうなんだ」 使い魔は申し訳なさと安堵の入り混じった微妙な表情で頷いた。 「次に、特定の魔法を使う時に必要な秘薬を見つけてくること……なんだけど、これもダメね。記憶喪失じゃ、コケやら硫黄やらって言っても分からないでしょ?」 「うん」 平民では記憶が戻ったとしても駄目な気がするが、あえてそれは考えまい。 「そして最後に、主人の身を守る存在であること……なんだけど、これもダメよね。あんた、腕っ節があるようには見えないし、なにか特別な能力があるわけでもないだろうし」 「……ん、ああ、そうだね」 身を守る、と言ったところでなにか引っかかっていたようだが、大したことではないようだ。 しかし整理すると、この使い魔は使い魔らしいことは何一つ出来ない、ということになる。 平民を召喚してしまった自分のふがいなさにちょっとだけ泣きたくなったが、それよりまずは彼の仕事を決めることにした。なにが出来ずとも、遊ばせておくわけにはいかないのだから。 「ということで、あんたには洗濯と掃除、後はその他の雑用をやってもらうわ」 「了解」 能力と種族はともあれ、従順なのは美点だ。使い魔としてはそれが普通なのだが、ヒトであり、かつ常識に欠ける以上は、もう少し軋轢があってもおかしくなかった。 記憶喪失から来る不安もあるのだろう。それが、自分の行った『コントラクト・サーヴァント』が原因である可能性を考えると、ちょっとだけ後ろめたくなった。 そんな後ろめたさを振り払うように、ルイズは話を変えた。 「ところで、あんた召喚された時になんかごそごそやってたけど、あれはなにをしてたの?」 「ごそごそ?」 「いや、このバッグ漁って、なにかやってたじゃない」 そう言ってバッグを手渡してやるも、使い魔は首を傾げている。やはり、自分の持ちものについてすら忘れてしまっているらしい。 もしかすれば、バッグが記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないと思ったのだが、そう簡単にはいかないようだ。前途多難である。 ルイズは一つ首を振ると、疲れ切ったように言った。 「いいわ、忘れて。……たくさんしゃべって疲れちゃったから、寝るわ」 「分かった」 そう簡潔に答えると、使い魔はごく自然な動作で部屋を出ようとする。慌てて止めた。 「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何処に行くのよ!」 「……? ツカイマは外、じゃないの?」 「いやまぁ普通はそうだけど! 使い魔用の厩舎もあるけど!」 ご主人様と使い魔の関係をはっきりさせておこうとは思っていたけれど、流石にそこで寝ろとまでは言わない。むしろ言えない。 あれだけの思いをして契約した使い魔が、大型の幻獣に餌と間違われて美味しく頂かれてしまいました、なんてなったら、泣くに泣けない。 毛布を投げ渡しつつ、ベッドから離れた床の一角を指指す。 「これ貸してあげるから、そこで寝なさい」 「……ん、ありがとう」 反抗的なのは大変だろうが、理解が良すぎるのもそれはそれで疲れるものだ。 そんなことを思いながら、ルイズは寝るために着替えることにする。ブラウスのボタンを全て外したところで、使い魔に視線をやると、毛布にくるまり既に寝息を立てていた。 「……はぁ」 本来なら怒鳴ってでも起こしてやるべきところなのだろうが、今日は色々とあり過ぎて気力がない。洗濯に関しては、明日にでも改めて言いつけることにしよう。 ルイズはランプの灯を落とすと、寝台に横になる。するとよほど疲れていたのか、使い魔に負けず劣らずの早さで寝息を立て始めた。 前ページ次ページゼロの使い魔BW
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4462.html
この戦いは、彼の望んだものではなかった。 『魔竜』シューティングスター。 火竜山と呼ばれる活火山地帯に生息。四枚の剛翼に金色の瞳。紅の竜鱗が、火山の一部と見紛う巨大な体躯を覆う、畏怖の象徴とされてきた『五色竜』の赤。 ロードス島にまだ魔法王国が栄えていた古い時代、時の太守によって、秘宝『支配の王錫』を守護するため火竜山に呪縛された、古竜(エンシェントドラゴン)。その古竜が、今まさに、死の淵に足をかけていた。 (くそっ、こんな棒切れ、俺にはどうでもいいのだ!) 黒衣の騎士の、黒く禍々しい大剣に斬りつけられるたび、思考が千々に乱れる。 『魂砕き(ソウルクラッシュ)』。名の通り、精神を削り取り魂を砕く漆黒の魔剣。 傭兵の男の剣は、鋼をも拒む竜の鱗を、易々と斬り裂いてくる。 『ソリッドスラッシュ』。どんな強固な鎧をも羊皮紙のように切り裂く、物理防御を無視する魔剣。 相手の恐怖を増幅させ、魂と精神を萎縮させる竜の咆哮は、戦神神官の謡う『戦の歌』が。 岩盤をも溶かす灼熱のブレスの奔流は、慈愛神官の神聖魔術『ファイア・プロテクション』によって、ことごとく防がれた。 ならば神官どもを先にと、巨大なかぎ爪を振るうも、プロテクションやシールドなどの支援魔術により強化された前衛が、死に物狂いで守護。その間にも、二本の魔剣によって無視できないダメージが蓄積されていった。 駒を使った盤上ゲームでいう「詰んでいる」状態。もはや魔竜の敗北は必至だった。だが、太古にかけられたギアス(制約)の呪縛により、支配の王錫の守護を放棄しての逃走は許されない。過去に一度、火竜山からの移動を試みるも、ある程度離れると耐え難い苦痛が魔竜を襲ったのだ。 (死ぬのか? このままあの棒切れの為に俺は死ぬのか!?) 人間どもを追い詰めるとロクな目に遭わないという事は、ギアスをかけられた古代魔法時代の経験から、魔竜は身をもって学習していた。なので、火竜山とその周辺の平原、火竜の狩猟場と呼ばれるテリトリーを侵した者以外は襲うことなく、長い時間をおとなしく過ごしていたのだ。 秘宝『支配の王錫』をめぐる、ロードスの英雄達による争奪戦。ギアスのおかげで、それに巻き込まれただけ。 (動け! 動いてくれ翼よおおおお!! このままでは……このままでは……!!) ギアス発動。全身の鱗の隙間に剣を突き立てられたが如く襲いくる鋭い痛みに、のたうち回る魔竜。 それを隙と見たハイエルフの娘は、大地の精霊王を召喚。ベヒモスの起こした地割れはシューティングスターを飲み込み、その動きを完全に封じた。 (下等生物がああああああああああああ!!) 怒りの咆哮が火竜山を揺らした。 トリステイン魔法学院屋外。進級試験の科目『召喚の儀式』。 周りを取り囲むギャラリーの中心に立ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、タクトを構えると小さく息を吐いた。 小柄で凹凸のない体躯。風に揺られる桃色の髪。度重なる魔術の失敗に、ついた二つ名は『ゼロのルイズ』。 面白半分どころではなく、面白3/4程度を含んだ期待の眼差しを360度から受け、その身を震わせた。 (緊張? ……違う。恐れ? ……違う) 今までバカにしてきた連中を見返してやる、チャンスの時が訪れたのだ。 今日この日までにたくさん勉強した。体調は良好。魔力も身体の全身に行き渡り、漲っている。 「召喚の儀式だけは自信がある!」 と見栄を張った以上、貴族の誇りにかけて成功させねばならない。 「さぁ、早く私のサラマンダーより凄い使い魔とやらを呼んで見せてよ?ルイズ」 ルイズとは対象的な、メリハリのあるボディをわざとらしくくねらせ、挑発をする長い赤髪の女。沸点が低く、からかいがいのあるルイズは、常日頃、彼女、キュルケの恰好の玩具と化していた。 「うるさいわね! 言われなくても呼んでやるわよ! そんなしょぼい火トカゲなんかメじゃない、すんごいのをね!」 「それはそれは楽しみだわ。うふふ♡」 (馬鹿にして! 馬鹿にしてぇ……!) 怒りをタクトに乗せ、詠唱を開始。 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ!」 ハァ? 聞いた事もない無茶苦茶な呪文の詠唱に、周りのギャラリーの顔が、一瞬ぽかーんとなる。そしてすぐに嘲笑へ。 「サラマンダーより早ーい! 強い! 大きく! 美しい! 強力な使い魔よ!」 周りを気にせず詠唱を続行。魔術にとって呪文など、自分を騙せて、魔術が扱いやすい身体に切り替えれればなんでもいい。無詠唱で魔術を行使できる者もいる事から、それは証明されている。要は気持ちなのだ。そしてルイズの込めた気持ちは、怒り。 「私が心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」 静寂。 震える空気。 そして閃光。 大爆発。 会心の手応えをルイズは感じる。 (私は間違いなく、キュルケの使い魔を上回るモノを呼び寄せた!) 「な、な、な……なんなのこれ……た、タバサ!?」 片時も本を手放さない水色ショートヘアのメガネ少女に、キュルケは後ずさりながら意見を求める。教師であるコルベールですら、目の前に呼び出されたモノを理解する事ができずに硬直していた。 「……どう見ても火竜。大きさからしてかなり上位。……手負いみたい」 タバサと呼ばれた、ルイズと似たような体躯の文学少女は、キュルケを一瞥すると、自らの使い魔である風韻竜のシルフィードに飛び乗った。 「……いざとなったら全力で逃げて。幼竜のあなたじゃ何もできない」 いつでも魔術を行使できるよう、険しい顔つきでロッドを握り締める。他のルイズを囲んでいた生徒達は、動く事はおろか、声をあげる事すらできなかった。 ただ一人、ルイズだけが、歓喜に瞳を輝かせる。 学院の外壁を、完膚なきまでに押し潰して横たわる赤い山。その赤い山が、ゆっくり、ゆっくりと、隆起した。 シューティングスターは、起こった出来事を理解することができなかった。 意識を失う寸前に見た最後の光景は、心臓を目掛けて魔剣を突き出す男の姿。遠のく意識に死をも覚悟した。しかしどうだ。意識が戻ってみると、火竜山とは全く異なる場所。 (俺は……生きているのか? ここは何処だ? 空間移動の魔術かなにかをかけられた? ギアスは?) 人間どもに囲まれているという状況は変わらないが、魔剣の騎士や傭兵、ハイエルフの娘や神官どもなど、彼を死に追いやるほどのツワモノは消え失せていた。代わりに存在するは、怯えきった目で彼を見上げる小さな人の子ばかり。 (格好から見るに、この集団は魔術師か? 子供とはいえ警戒を解く理由にはならん) 過去に、人間を快楽のため虐殺し、追い詰め、魔術師にギアスという手痛い土産を貰ったことを思い出す。 (こやつ等の目的が何かは知らんが、身体は……動かんか。状況はまったく変わってないな……) 金色の瞳の片方は無残にも潰れ、四枚の大翼はズタズタに裂けていた。紅の竜鱗は傷ついていないものを捜す方が難しい状態。今は現状把握と回復に努める他はない。その現状把握に努めた結果、ある事に気付いた。 今まで忌々しく響き渡っていた、戦神神官の『戦の歌』が聞こえない。ということに。 戦の歌とは、戦神の加護により、闘う者達を恐れ知らずの兵へと変え、肉体の限界を引き出し、精神に対する状態異常を無効化する神官スキルだ。 せめてもの悪足掻きと、首をもたげた魔竜は迷わず肺胞に酸素をとりこんだ。 「……危ない!」 火竜の動作からファイアブレスを予測したタバサは、雪風の二つ名に恥じない吹雪を、生徒達と魔竜の間に発生させた。轟音と共に吹き荒れる凍気。 結果から言えば、タバサは判断を誤った。だが、咄嗟にとった行動は、僅かながらに成果を上げた。 火竜が放ったのは、ファイアブレスなどではなく咆哮。 緊急事態と判断した学院長が発動させた、秘宝『眠りの鐘』の音はかき消され、学院の窓ガラスという窓ガラスを全て砕き、衝撃で学び舎は大きく震える。 ドラゴンズ・フィアー。音の衝撃に加え、敵対者の精神を挫く竜の雄叫び。 巻き起こった吹雪のあげる轟音が、幾分かは軽減したが、間近にいた生徒は無事ではすまなかった。鼓膜の破裂。身体の麻痺、昏倒。恐怖で発狂した生徒もいれば、魂魄を砕かれ即死した生徒もいた。各々の精神力に応じて様々な状態異常に襲われた生徒達は、一瞬にして恐慌状態へと陥り、もはや魔竜をどうこうできるという状態ではなくなっていた。 (これでしばし時間稼ぎができるか) 再びうなだれうずくまる魔竜。 ドラゴンズ・フィアーにからめとられたシルフィードは落下し、中空へ放り出されたタバサは、なんとか受身を取るも、それ以上は身体が痺れて動けず、転がるに任せる。何かにぶつかって止まったので、なんとかギリギリと首を横にめぐらせると、それは意識を失いぐったりと横たわっていたキュルケだった。 「すごい……! すごいすごいすごい! あはははははははは!」 咆哮の直前に抱いていた歓喜の感情が、恐怖による精神攻撃を緩和したのか。笑いながら吹き飛ばされて転がったルイズは、すぐさま起き上がると、猛然と魔竜の足元まで走り抜けた。 思うはただ一つ。 「こんな大物を逃がしてなるものですか!」 前足にとりついたルイズは素早く爪先に口付けると、コントラクトサーヴァントの魔術を詠唱。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ!」 口付けをした前足に、あっさりとルーンが刻まれ契約完了。 傷による苦痛で動くことかなわぬシューティングスターは、これ以上の抵抗をあきらめた。 「……わたしルイズ。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。あなた、言葉はわかる?」 恐る恐る尋ねるルイズに、獣の唸り声のような低い音で、シューティングスターは答える。 (俺をここへ呼んだのは貴様か? 何が目的だ?) 「!? ……わかる! あなたの言葉がわかるわ! えぇ、えぇ、使い魔として確かにわたしが召喚したわ!」 竜言語(ドラゴンロアー)。相手の精神に直接意思を伝える高等言語。咆哮はこれを応用したものだ。 (使い魔? 貴様この俺を使役しようというのか?) 「とくに不自由させるつもりはないわ。あなたに炊事洗濯とかできるとは思ってないしね」 (ではどうするつもりだ?) 「それよりもあなた名前は? さっきのやつの他にどんなことができるのかしら!? サラマンダーより強い!?」 熱に浮かされたかの様に紅潮し、一気にまくしたてるルイズ。 あっけにとられたシューティングスターは、とにかく今は回復に努めたかったので、時間稼ぎを兼ねて質問に順番に答えてあしらうことにする。 (人間どもにはシューティングスターと呼ばれていた。俺にできることは、焼き尽くし破壊することだけだ。今は手負いだが、それでもサラマンダーごときに後れはとるまい) 「ホント!? ホントホント!?」 (あぁ) 再び輝くルイズの瞳。キョロキョロと凄惨な現場と化した学院の周囲を見渡し、気絶し倒れているキュルケを発見。 「あはははは! 聞いた? どうやらわたしの使い魔は、アンタのしょぼい火トカゲなんか問題にもならないそうよ? ちょっと聞いてるのキュルケ!」 横たわるキュルケの脇腹に、振りかぶった脚の爪先を食い込ませるルイズ。キュルケは抵抗することなく、身体がくの字に折れ曲がって転がった。 「ルイ……ズ?」 隣で麻痺から抜け出せずにいたタバサが、信じられないといった目でルイズを見上げる。 「よくも!」蹴る。「今まで!」蹴る。「散々!」蹴る。「馬鹿に!」蹴る。「してくれた!」蹴る。「わよねぇ!」蹴る。 「ゲホッ! ゲホッ!」 「あはははははははは!!」 気の済むまでキュルケを痛めつけたルイズは、血の混じった咳を吐くキュルケを一瞥すると、今度はタバサに向き直った。 「……うぅっ」 敵意を持つ者を前に、身構えたくても身構えることのできない恐怖。必死に身体を動かそうと努力をしたが、どうやら身じろぎ一つが限界。観念したタバサは、きつく目を閉じた。だが、いつまで経っても暴力という嵐はやってこない。 恐る恐る目を開けたタバサは、そこで軽い眩暈に襲われる。 「あなたはこの学園の生徒でただ一人、わたしを馬鹿にしなかったわ。だから許してあげる」 足元に立つルイズ。その混濁とした瞳を垣間見たタバサは、悟ってしまったのだった。 あぁ、ルイズはあの時の咆哮で、既に狂ってしまっていたのだと。 召喚の儀式によって死者まで出してしまったこの事故は「魔物を呼び寄せる以上、このような事故は想定済み」という学院長の言により不問とされた。 キュルケも何本かの肋骨の骨折で済んだが「咆哮により吹き飛ばされた際に怪我を負った」と証言し、タバサとともに、それ以上は口を閉ざした。彼女なりに思うところがあったらしい。 ルイズの気持ちを考えない自分の軽薄な態度が、あそこまで彼女を追い詰めていたなんて思いも寄らなかったのだ。 当のシューティングスターは、古竜のもつ超再生能力により、一晩で翼膜が生成され、二晩で鱗が生え変わり、三日で潰れた片目が治癒。四日目で折れた角も治り、すっかり完治したが、この四日間で、以前の気性の荒さは失せ、おとなしくルイズに従っていた。 使い魔の儀式による、主人にある程度友好的となる効果もあるが、曰く、死にかけていたところを救ってくれた命の恩人であり、数百年にわたって身を苛ませていたギアスから解放してくれたことは、何事にも勝る喜びらしい。 それからさらに数日後。 学院に訪れたアンリエッタ王女に、古竜を従えた実力を買われて密命を下されたルイズだったが、平然とこう言い放った。 「大丈夫です姫さま。如何にトリステインが小国といえども、わたしとシューティングスターがいます」 「……え?」 「望まぬ政略結婚などせずとも、姫さまを悩ますアルビオンの反乱軍は、シューティングスターが皆殺しにしてみせます」 「え……? え? え……?」 「反乱軍を一晩で焼き払い、全滅させれば、他国とてトリステインを侮る事もなくなるでしょう。シューティングスターにはその力があります。そうすれば姫様も政略結婚などせずにすみますし、笑顔でいてくれますよね?」 「ルイ……ズ?」 王女に背を向け、部屋の扉を開け放つルイズ。 「お待ちなさいルイズ!」 振り返るルイズ。その混濁とした瞳を垣間見たアンリエッタは、かつてその瞳を覗いたタバサと同じく、言葉を失った。 「では行ってまいります!」 サイズが大きすぎる為、学院寮の外で待機を命じられ寝そべっていたシューティングスターは、しきりに話しかけてくるタバサの使い魔、幼竜のシルフィードの愚痴に相槌を打っていた。 「で、タバサお姉さまは人前で喋るなって言うのよ! シルフィ、もっといろんな人とお話したいのに!」 (いつだって竜は、人にとって畏怖の象徴なんだよ。お前の主人は、そんな目でお前が人間どもから見られ、迫害されることを恐れているのだろう) 「迫害……? そういえばここに来た時ボロボロだったけど、アレも人間がやったの?」 (あぁ。俺が嫌々守らされてた棒切れ欲しさに、集団で押しかけてきたのだ。……っと、御主人様のお出ましだ) ルイズの接近を感知したシューティングスターは、横たえていた身体を起こした。小山ほどの大きさの体躯が、起き上がることで山となる。 「お出かけよ、シューティングスター。翼はもう大丈夫?」 (問題ない。ということでお出かけだそうだ。またな嬢ちゃん) 「うん! またシルフィとお話してねー!」 ルイズのマントの端をひょいと咥えたシューティングスターは、首を持ち上げて上へ放り投げた。 器用に魔竜の頭の上へ着地したルイズは、角を掴んで伏せる。 「これからアルビオンというところへ行って貰うわ。方角は大体あちらの方よ」 (心得た) 巨大な四枚の翼を展開すると、辺り一面が日陰に覆われ、凄まじい風圧が発生する。軽く羽ばたき、翼に風をはらませた瞬間、一気に垂直に飛び上がった。 ある程度の高度に達したのを確認すると、ぎりぎりまで引き絞られた弓から放たれた矢の如く、ルイズの指し示した方向へ加速。 「あはははは! すごいすごい! 名の通り、まるで流星ね! あはははははははは!!」 王女がルイズに同行させようと連れてきた、グリフォンを使い魔とする騎士は、無視して置いてきた。 シューティングスターに脅えきったグリフォンが、使い物にならなかったのだ。 もとよりグリフォンとシューティングスターとでは、飛行速度が這い這いの赤ん坊と全力疾走の大人以上に開きがあるので、足手纏いにしかならない。 (黙ってろ。舌を噛むぞ) 「あはははははははははははははははは!!」 ギアスを気にせず大空を自由に舞えることが、シューティングスターの全身を喜びで満たす。主人の御機嫌も良好だ。最短距離を一気に飛翔し、一日とかからず浮遊大陸アルビオンに到着してしまった。 (何か出てきたが、あれはなんだ?) 「あれは敵よ! 思いっ切りやっちゃって!」 (耳をふさいでろ) 出迎えにきた飛空挺部隊を咆哮で一蹴。後から続々と出てきた小型艇は、シューティングスターの飛行により発生する竜風圧によって、乱気流に巻き込まれて叩き落とされた。続けて現れた迎撃艇には、灼熱のブレスを浴びせて沈黙させる。 ほんの僅か。お茶も飲めないほどの僅かな時間で、反乱軍は壊滅的な打撃を受けていた。 「脆い! 脆いわ! あはははは! 死ね死ねー! 姫さまの笑顔を曇らせる輩はみんな死んでしまえ! あはははははははは!!」 魔竜の勢いは止まらない。そしてルイズの中で加速する狂気も。 流星を従えし狂える王は、大きく手を振りかざし、眼下の豆粒に向かってその手を振り下ろしながら、臣下に似た咆哮をあげた。 「なぎはらえー!」 ○________ なぎはらえー | |\\ ||. .|| //| /イ | l\\\||. .|l///| ./// __ ィ ,. -――- 、 | | 二二二二二二二 !// / / ∟/ \. | l///||. .|l\\\|/ / / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./ / / l l l lハ | |// ||. .|| \\l / ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V | | ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / ! ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V ‐一 '´ / __. -―=-` / / l l \! | / 入_.V/| >-ヘ \ ∨ ∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l __ |\ l/V _{_____/x| (_| __ノ }ィ介ーヘ / ,.-‐ ' ´ / ____  ̄ ̄フ ∧ l )-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V ノ/ ∠___ { / `< / \| { V /`7. /___./xXハ ( | ハ >' ____ 二二二二二二> / __ 〈. \_ |/ /___l XX∧ __≧__ / ∧/ `丶、 / { {____ハ } | ヽ /____|ⅩⅩ∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、 / \_____/ / | ', { |ⅩⅩⅩ ' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、 ∠ -――- ..____ノ / ノ } l ̄ ̄ ̄.|Ⅹ ' ,. '  ̄ / .// / V' \ ヽ `丶\/ / / ∧ { \ | .| ' / // / / ', l \ ヽ ,.-――┬ \ / 入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l / l l \V ヽ \ ,. '´`ー′ \ `< | { / | /〃 |/ __V/ ̄| ̄ ̄{_ \_ ` < \ `' ┴ヘ { .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' | / ノ`y‐一' >、_/ / ̄ 7丶、_ 丶 \ ヽ /`ー「と_し^´ | | } ム-‐' / / \_/ / / ヘ \ ヽ _>-ヶ--∧_} ノ j /` 7 ̄ ̄ ̄{ (  ̄ ̄`ー‐^ーく_〉 .ト、_ ', / 人__/ .ィ {__ノ`ー' ヽ 人 \__ { } | V 人__/ / | /  ̄{ ̄ >‐ ァ-、 \ 〉ー} j { / ./ ∨ __  ̄ ̄ -</ / ̄ ̄ 廴ノ ' <ヽ__ /し / < )__ \ _r‐く___/ / < ) \ {__ノ / Y__>一' / ___r―、_\ >' `ー' ,. ´ >.、 \__ノ { ∠二)―、 `ー‐┐ ∠ ∠_r‐--― <__ ∠ )__ \_ ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|> ∠)__r―――-― ..__{> ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{> 終 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/648.html
馬に乗ること3時間、ルイズとギアッチョはトリステインの城下町に到着した。ここ ハルケギニアに召喚されてから初めて見る学院外の景色だったが、ギアッチョは 今それどころではなかった。生まれて初めて乗馬を経験した彼は腰が痛くて仕方が なかったのだ。 「そっちの世界に馬はいないの?」 ルイズが不思議そうに尋ねる。 「いねーこたねーが・・・都市部で馬を乗り物にしてたのは遥か昔の話だ」 ギアッチョが腰を揉みほぐしながら答えるが、ルイズはますます不思議な顔を するだけだった。 「まぁ覚えてりゃあそのうち話してやる それよりよォォ~~ 剣ってなどこに 売ってんだ?」 「ちょっと待って・・・ええと こっちだわ」 ルイズが地図を片手に先導し、ようやく周囲に眼を向ける余裕が出てきたギアッチョは その後ろを観光気分でついて行く。何しろ見れば見るほどメルヘンやファンタジー以外の 何物でもない世界である。幅の狭い石敷きの道や路傍で物を声を張り上げて売る商人達、そして彼らの服装などはまるで中世にワープしたかのようだ。しかし中世欧州と似て 非なるその建築様式が、ここがヨーロッパではないことを物語っていた。 「魔法といい使い魔といい、メローネあたりは大喜びしそうだな」などと考えたところで、 ギアッチョは自分が既にこの世界に馴染んでしまっていることに気付いた。 リゾットはどうしているのだろう。見事ボスを倒し、自分達の仇を取ってくれたのだろうか。 それとも――考えたくないことだが、先に散った仲間達の元へ行ってしまったのだろうか。 このハルケギニアと同じように時間が流れているのならば、きっともうどちらかの結果が 出ているだろう。 ホルマジオからギアッチョに至る犠牲で、彼らが得る事の出来たボスの情報はほぼ 皆無だった。いくらリゾットでも、そんな状態でボスを見つけ出して殺せるものだろうか。 相当分の悪い賭けであることを、ギアッチョは認めざるを得なかった。 ――どの道・・・ ギアッチョは考える。どの道、もう結果は出ているのだ。自分はそれを知らされていない だけ・・・。 「クソッ!!」 眼に映るものを手当たり次第ブチ壊してやりたい気分だった。当面はイタリアに戻る 方法が見つからない以上、こんなことは考えるべきではなかったのだろう。だがもう遅い。 一度考えてしまえば、その思考を抹消することなどなかなか出来はしない。特に―― 激情に火が点いてしまった場合は。 ――結末も知らされないままによォォーーー・・・ どうしてオレだけがこんな異世界で のうのうと生き長らえているってんだッ!ああ!?どうしてだ!!どうしてオレは生きて いる!?手を伸ばすことも叶わねぇ、行く末を見届けることすら出来やしねえッ!! 何故オレがッ!!ええッ!?どうしてオレだけがッ!!何の為に!!何の意味が あってオレは惨めに生きている!?誰か答えろよッ!!ええオイッ!! 一体何に怒りをぶつければいいのか、それすらも解らないまま――、ギアッチョは 溢れ出しそうな怒りを必死に押しとどめていた。 「・・・ギアッチョ ・・・・・・どうしたの?」 その声にハッと我を取り戻したギアッチョが顔を上げると、ルイズが僅かな戸惑いをその 顔に浮かべて自分を見ていた。 「・・・・・・なんでもねぇ」 思わずルイズに当たりそうになったが、彼女とて意図して自分を呼び出したわけでは ない。数秒の沈黙の後――ギアッチョは何とかそれだけ言葉を絞り出した。 いつもと様子が違うギアッチョに、ルイズは当惑していた。ギアッチョを召喚してまだ 数日だが、この男がキレた所はもう嫌というほど眼にしていた。そしてその全く 嬉しくない経験から理解していたことだが、ギアッチョはブチキレる時にTPOを わきまえることはない。食堂だろうが教室だろうが、キレると思ったらその時スデに 行動は終わっているのがギアッチョなのである。シエスタから聞くところによると、 既に厨房でも一度爆発したらしい。傍若無人を地で行く男であった。 そのギアッチョが怒りをこらえている。ルイズでなくても戸惑いは当然だろう。 レンズの奥に隠れてギアッチョの表情は判らなかったが、ルイズには彼が無言の うちに発している悲壮な怒りが痛々しいほどに伝わってきた。 ――・・・ギアッチョ 私のただ一人の使い魔 ただ一人の味方・・・ ルイズはギアッチョの力になってやりたかった。圧勝とは言え体を張って自分を 助けてくれたギアッチョに、せめて心で報いたかった。しかしルイズの心の盾は 堅固不壊を極めている。自分の為に本気で怒ってくれたギアッチョに、ルイズは ただ一言の礼を言うことすら出来なかった。そして今もまた、ルイズの盾は 忠実に職務を果たしている。ギアッチョに報いたいというルイズの思いは、自らの 盾に阻まれて――彼女の心の内に、ただ虚しく跳ね返った。 こうして、怒りを内に溜め込んでいるギアッチョと自己嫌悪に陥っているルイズは 二人して陰鬱な空気を纏ったまま武器屋へと到着した。 貴族が入店したと見るやドスの効いた声で潔白の主張を始める店主に「客よ」と 告げて、ルイズは剣の物色を始める。 「・・・ギアッチョ、あんたはどれがいいの?」 使用者であるギアッチョの意向無しに話は進まないので、ルイズは意を決して 話しかけた。 「・・・剣なんぞに馴染みはねーんだ どれがいいかと聞かれてもよォォ」 同じ事を考えているであろうギアッチョは、そう答えて適当な剣を手に取る。 「――リゾットの野郎がいりゃあ・・・いいアドバイスをくれただろうな」 刀身に視線を落とすと彼はそう呟いた。 リゾット・・・何度かギアッチョが話した彼のリーダー。怒りや悲しみがないまぜに なった声でその名を呟くギアッチョに、ルイズは何かを言ってやりたくて・・・ だけど言葉すらも浮かんではこなかった。 「帰りな素人さんどもよ!」 ルイズの代わりに静寂を破ったのは、人ではなかった。二人が声の主を 探していると、再び聞えたその声はギアッチョの目の前から発されていた。 「剣なんぞに馴染みはねーだァ?そんな野郎が一人前に剣を担ごうなんざ 100年はえェ!とっとと帰って棒っ切れでも振ってな!」 「・・・何? どこにいるのよ」 ルイズがキョロキョロとあたりを見回していると、ギアッチョがグィッ!と一本の 剣を持ち上げた。 「・・・インテリジェンスソード?」 ルイズは珍しそうに持ち上げられた剣を眺めている。 「は、いかにもそいつは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ こらデル公!お客様に失礼な口叩いてんじゃあねえ!」 店主の怒声をデル公と呼ばれた剣は軽く受け流す。 「おうおう兄ちゃんよ!トーシロが気安く俺に触ってんじゃあねーぜ!放しな!」 なおも続く魔剣の罵声もどこ吹く風で、ギアッチョは感情をなくした眼で「彼」を じっと見つめている。 「聞いてんのか兄ちゃん!放せっつってんだよ!ナマスにされてーかッ!」 なんという口の悪さだろう。ルイズは呆れて剣を見ている。そしてギアッチョも 感情の伺えない眼でデル公を見ている。 「・・・おい、てめー口が利けねーのかぁ!?黙ってねーで何とか言いな!!」 ギアッチョは見ている。死神のような眼で、喋る魔剣を。 「・・・・・・ちょ、ちょっと何で黙ってんだよ・・・喋ってくれよ頼むから ねぇ」 ギアッチョは不気味に見つめている。彼の寡黙さにビビりだした剣を。 「・・・あのー・・・ 丁度いいストレスの発散相手が出来たって眼に見えるんですが ・・・僕の気のせいでしょーかねぇ・・・アハハハハ・・・」 そして完全に萎縮してしまったインテリジェンスソードを見つめる男の唇が、 初めて動きを見せ―― トリステイン城下ブルドンネ街の裏路地に、デル公の悲鳴が響き渡った。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/52056.html
登録日:2022/09/08 (木曜日) 12 03 00 更新日:2024/07/25 Thu 12 07 24 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 おっぱい おてんば アンリエッタ アンリエッタ・ド・トリステイン ゼロの使い魔 ルイズ最大のライバル 作者のお気に入り 姫 川澄綾子 巨乳 幼馴染 水属性 王女→女王 紫髪 あなたはいいわね。”恋”だけに生きられて ヤマグチノボル氏のライトノベル『ゼロの使い魔』のヒロインの一人。 CV 川澄綾子 【概要】 フルネームはアンリエッタ・ド・トリステイン。17歳で紫に近い色の髪とブルーの瞳(*1)を持つ美少女。 本編の主な舞台となるトリステイン王国の王女(後に女王)であり、ルイズとは子供の頃からの幼馴染。 女王としての風格と決断力、民に対する慈愛と責任感も持ち合わせており、多くの臣下や民、ルイズからも強く忠誠を誓われている。 ただし、プライベート、特に恋愛が絡むと、公と私、本音と建て前、表と裏で非常に人間が変わる二面性の大きなヒロイン。 本編では高貴な女王としての公人の顔でいることが多いが、幼少時は城内でルイズといっしょにいたずらに走り回るおてんば娘であり、こちらが彼女の素。 ルイズなどの気心の知れた相手の前ではかなり奔放な一面を見せることもある。 それゆえに世間知らずかつ自分の行動で起こることへの想像が追いつかないこともあり、それらへの後悔から次第に女王として成長していく。 アルビオン王国のウェールズ皇太子とは従兄妹の関係で、ティファニアとも従妹にあたる(*2)。 ウェールズとは恋仲であったが、物語前半で死別してしまったことから中盤まではやや荒れた様子を見せていた。 しかし、次第に才人に思いを寄せるようになっていき、ルイズ、シエスタに続いてヒロインレースに3番目に参戦(*3)。 そしてここからがアンリエッタのヒロインとしての本領発揮。 才人へは偶然にも助けられて、あの手この手でアプローチをかけるようになっていく。 しかも自分に自信のないルイズと違って、自分の美しさに疑いがないので超絶際どいレベルのお色気攻勢。 なお書き遅れたが、まな板幼児体系のルイズと対照的にアンリエッタはバストサイズも含めてプロポーションに非の打ち所がない。 バストサイズでは後にティファニアに抜かれたが、全体のバランスという点ではアンリエッタが最高レベル。 そんな美少女が裸や下着姿で不安げな面持ちですがってきたら普通は落ちる。才人も何度も落ちかけた。 基本的にラブコメの雰囲気な他のヒロイン達と比べてギャグやコメディ要素が希薄な分、ゼロの使い魔で屈指のエロさを誇る。 こんな感じなのでルイズとしても気が気ではなく、シエスタ以上に手段を選ばないこともあって最大の敵と認識されている。 そういうわけで、ラブコメであるゼロの使い魔では随一のトラブルメーカーとしても不動の地位。 王女や女王としての命令でルイズたちが窮地に陥ることもあるが、それ以上にルイズがアンリエッタに女子力で敵わなくて自信喪失というほうが被害が大きかったりする。 物語の中での存在感は終始大きく、ルイズと並んでゼロの使い魔という物語を象徴するヒロインだと言えるだろう。 なお、女王という立場上戦う機会は少ないが、メイジとしては水のトライアングルクラスに達していて、そこらの騎士よりはるかに強い。 【作中での活躍】 本編には2巻から登場。 ゲルマニアからの帰り道、学院に立ち寄ってルイズと久しぶりの再会を喜び合う。 この際、アルビオン王国が革命派レコン・キスタによって滅亡寸前であり、恋仲であったアルビオンのウェールズ皇太子の元に以前に送った恋文が残っていて、これが公になるとゲルマニアの国王と政略結婚を前提にした同盟が破産するかもしれないと、秘密裏に回収するようにルイズに命令を下す(*4)。 しかしこれはただの学生であるルイズの手には完全に余る任務であり、支援としてワルド子爵を送るが、ワルドは敵の内通者であり、ウェールズ皇太子は暗殺され、ルイズたちも危うく殺されかける瀬戸際までいってしまった。 かろうじて生還したルイズからこの話を聞いたアンリエッタは強いショックを受け、しばらくの間消沈する。 だがレコン・キスタに乗っ取られたアルビオンが条約を破って攻め込んでくると、ウェールズの仇を討たんと弱気になっている臣下を一喝して戦場に駆け付け、兵たちの士気を大きく鼓舞した。 けれども、恋人であるウェールズを失ったアンリエッタの傷心に付け込んで、レコン・キスタは死んだウェールズをアンドバリの指輪の効果で生き人形としてよみがえらせ、アンリエッタを誘拐しようとする。 ラグドリアン湖の湖畔で止めようと駆けつけたルイズたちと対峙し、アンリエッタはたとえ操られていたとしてもウェールズへの思いを捨てきれないと思いを吐露する。 「それは間違っている」と説得しようとするルイズや才人の言うことも耳を貸さず、アンリエッタはついにウェールズとの共同によるヘクサゴンスペルでルイズたちを排除しようとする。 しかしここでルイズのディスペルの魔法が覚醒。わずかな時間正気に戻ったウェールズを、哀しみの中で見送る悲嘆を味わうことに。 以後は、トリステイン王国はレコン・キスタとの戦争に巻き込まれていくが、アンリエッタにとって戦争は本意ではなく、しばしば取り乱していた。 特にワルドの裏切りの件もあってメイジに対する不信感が募り、自身の親衛隊として平民の女性剣士のみを選抜して編成した銃士隊を結成する。 この判断は正解で、隊長のアニエス以下優秀な人材揃いで、その後のアンリエッタを大きく支えることになっていく(*5)。 王政府内にレコン・キスタの内通者がいると知れた時には、あぶりだすために自ら自作自演の誘拐劇を演じて、見事に内通者を始末することに成功した。 なおこの際に才人をルイズの使い魔で信用できるからという理由で連れだし、街中を平民に扮して散策している。 しかし途中で自分を探す兵士の目をごまかすため、才人ととっさに『雨に濡れた薄着姿でベッドで抱き合って口づけをかわす』という荒業で乗り切っている。 なお本人は平然たるもので、アンリエッタのキャラがこのあたりで完成したようだ。 その後はアルビオンに向かい、戦争の指揮に当たる。 この頃には、戦死者の慰霊に心を砕くなど、優しさを失わずに戦争に向き合い続ける姿に、臣下は信頼を深めていた。 転機は戦争末期。7万のアルビオン軍に対してトリステイン軍は窮地に陥るが、才人の懸命な防戦によって救われる。 このことと、ラグドリアン湖で自分の前に立ちふさがってきたことなどから才人に対して興味を深めていき、才人の帰還後には彼に異例のシュヴァリエの称号を与える。 決定的となったのは9巻のスレイプニィルの仮装舞踏会の際で、この時アンリエッタはルイズに仮装していたが、仮装舞踏会ということを聞いていなかった才人に(*6)ルイズと思い込まれて、そのまま口づけまでしてしまう。 正体が明かされた後は、才人に対して恋心を吐露。才人も無碍にはできず、再び口づけをかわす。 その後、シェフィールドの襲撃を退けたルイズにも自分の恋心を告白、平手打ちを食らわされるものの、正式にルイズとは恋のライバル関係となった。 以後は女王の政務に励むために城からは動けない生活が続いたが、母からの見合いの話を拒絶するなど才人への思いは薄れることは無かった。 しかし、才人に恩賞として与えたド・オルニエール領の城と王宮が魔法の仕掛けでつながっているというアクシデントが発生して、夜の宮殿の自室に才人が迷い込んで、そのまま夜を共にする。 しかも悪いことにその光景をルイズに目撃されてしまい、完全に密通にしか見えないことからルイズは自信を喪失して家出をしてしまう事態を招いてしまった。 てか半分くらいは才人が悪い アニメ版ではより感情をあらわにするシーンが増え、毅然とした女王と、未熟な恋に翻弄される少女という二面がより強調された。 また、お色気シーンも増えて、上記の才人といっしょのシーンではなまめかしい裸体を存分に披露してくれる。 これらの他、アニメやドラマCDなどの外伝的なストーリーでの、女王としての責任が緩むところではけっこうはっちゃけていたりもする。 女王としての運命を受け入れようとしている彼女であるが、黙って言いなりになるほど物分かりはよくないようだ。 アニエスやマザリーニ枢機卿の胃が心配になるが。 【人間関係】 ルイズ 幼い頃からの親友であり、恋のライバル。 悪意はないものの何度も窮地に追いやることになってしまい、そのことで心を痛めている。 しかしルイズからは一切恨みを持たれてはおらず、国を治める者としての重責を心配されており、終始に渡って忠誠心が揺らぐことは無かった。 ただし才人を取り合う間柄としては別で、アバズレ呼ばわりされたことも。 才人 ウェールズ亡き後に次第に思いを寄せるようになっていった。 そのためシュヴァリエの称号を与えるなど厚遇していたが、それが他の貴族の才人への嫉妬を買うことにも繋がってしまった。 才人からも憎からず思われてはいるが、彼のルイズへの思いを変えるまでにはいたらなかった。 ウェールズ アルビオンの皇太子。アンリエッタとは相思相愛の仲ではあったが、彼自身は国際情勢の流れなども冷静に判断して、かなわぬ恋であると認識していた。 それでもアンリエッタのことを案じ続けていたがワルドに手にかかって暗殺されてしまい、後にアンドバリの指輪の効果でゾンビとして操られてしまう。 2度目の死の間際、正気を取り戻すことができ、アンリエッタに「自分を忘れて別の男と幸せになってくれ」と言い残して息を引き取った。 マザリーニ枢機卿 政治家としての師に当たる存在で、数少ない信頼できる側近の一人。 「鳥の骨」と揶揄される堅物で、アンリエッタに苦言を呈することも多いがそのほとんどは的を射た正論である。 ただし、有能で誠実であるのは間違いないが、教条主義的でかつ人を見る目に乏しい一面もある。 レコン・キスタが条約を破って侵攻してきた際にはうろたえるばかりでいたところをアンリエッタに叱責され、ワルドが内通者であったことを見抜けずに全幅の信頼を寄せてしまっていたことは彼の失態に当たる。 また、才人の特別性についても正確には認識できていなかった。 アニエス 銃士隊の隊長。アンリエッタ自らが平民から抜擢した存在で、全幅の信頼かつ絶対の忠誠を誓われている。 裏社会のことにも精通しており、乱世の人材としては非常に有能。 ただしアンリエッタの突飛な行動についていけずに振り回される一面もあった。 【余談】 女王という立場であることから、アンリエッタが作中でおこなったことは良い方向へも悪い方向へも非常に影響が大きい。 特に悪い方向へは顕著で、ルイズが死ぬ危険が大きいのにアルビオンに手紙を取りに行かせた、ゾンビウェールズに誘われるままに国を捨てようとした、教皇やジョゼフにまんまと手玉に取られたことなどはよくファンから槍玉にあげられる。 しかし17歳の未熟な少女が女王として君臨しなければならなくなったことがそもそも無茶であり、アンリエッタの未熟に関しては前王が亡くなっても王位を放棄して国の舵取りをしなかったマリアンヌ前王妃の責任のほうが大きいと言えるだろう(*7)。 才人に対する身分をわきまえない熱烈なアプローチも、女王としてはあるまじき行為と言えるが、それらも窮屈な王宮暮らしの中で結婚相手すら選べない不自由さの反動でもある。 それでもアンリエッタは失敗を反省して、自身の女王としての責任を自覚し、あるべき姿を模索して努力を重ねており、暗愚の王からはほど遠い。 もっとも、才人へあざといばかりのアピールをするところではルイズへの嫉妬も混ざっており、少々擁護しづらい。 そもそもルイズからの証言とは言えルイズ本人が好きになった物を後から好きになって取り上げる傾向があったとか言われてるし こうした悪女っぽいところもあるアンリエッタはヤマグチノボル先生のお気に入りヒロインでもあり、彼女を書くときは相当筆が乗ったとか。 良くも悪くも評価が分かれ、好かれる人には好かれるが、嫌う人からは徹底的に嫌われるヒロインだと言える。 ただしその分の存在感は絶大であり、様々なファンタジー作品を見回しても、アンリエッタほどの個性と存在感を持ったお姫様キャラはそうそういない。 だてにルイズの最大のライバルだったわけではないのである。 追記に修正、どうかよろしくお願いいたしますわ。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 建て乙。いつも息子がお世話になっております -- 名無しさん (2022-09-08 13 01 13) 二次創作ではウェールズが死なないで物語が進むこともあるね。ただ、愛していたのかは本人なのかロマンチズムな想い出なのか、バッドになるかグッドになるかはまた別の話。 -- 名無しさん (2022-09-08 13 39 05) 項目名はフルネームの「アンリエッタ・ド・トリステイン」の方がいいんじゃない? -- 名無しさん (2022-09-08 13 42 14) まあ優秀な君主の部類かな。母親がアレなせいで『まともな帝王学』叩き込まれてない割にはだけど。 -- 名無しさん (2022-09-08 21 34 07) 序盤から中盤にかけては傾国の女だけどね -- 名無しさん (2022-09-09 08 59 15) 才人へのハシゴを掛けては外して(外されて)を繰り返した人。ただ(元)王女のタバサが本格参戦したために、作者からアンリエッタはヒロイン除外を余儀なくされた感じ。最終的にはルイズ、シエスタ、タバサ、テファのヒロイン四天王が強すぎた… -- 名無しさん (2022-09-09 10 35 45) 正直ゼロの使い魔で一番好きなヒロインです、はい。特に16巻の密通の時の艶めかしさはヤバい。才人が唯一浮気してしまったのも頷ける -- 名無しさん (2022-09-09 11 45 49) 余談のリンク先、あの方はアニメ界全体の同年代と比較しても覚悟決まりすぎてる女傑だからそれは酷ですて…w -- 名無しさん (2022-09-09 14 28 58) 公爵の娘を死地に送るな。配下が信用できないと言った癖にワルドを同行させるなと色々と言いたい -- 名無しさん (2022-09-09 20 48 55) ↑ルイズ死地に送ったのは確かにアカンけど配下不信はワルドの裏切りが原因だから順序が逆やぞ。 -- 名無しさん (2022-09-09 21 25 15) 先生のニュアンス的にも我儘だからこそ「王」みたいな意味でらしく造形されてるとこあるからね。そこも含めて魅力扱いなのかやはり嫌われる女と言うべきなのか複雑なキャラクター性をしている。 -- 名無しさん (2022-09-10 00 28 34) 「レコン・キスタとの戦争が本意ではない」とあるけど、確か公私混同してなかったっけ?ウェールズの敵討ち -- 名無しさん (2022-09-10 17 15 55) ↑途中送信ミス。国としては防衛戦争、私欲としてはウェールズの敵討ちで、戦争後にルイズ父、に指摘されてたような -- 名無しさん (2022-09-10 17 18 53) 声的にシャナに続いてくぎゅの恋のライバル役か -- 名無しさん (2022-09-11 00 31 42) 薄い本では本領全開発揮 -- 名無しさん (2023-03-19 23 10 45) 人によってはロイヤルほにゃららあつかいされるキャラ・・・ この評価初めて見たときは絶対言いすぎだと思った バハラグ王女ならぴったりだが -- 名無しさん (2024-07-25 12 07 24) 名前 コメント